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気まぐれの風

気まぐれの風

中国 母と娘の二人旅3

五月五日

礼さんがロビーに八時に迎えに来てくれる。
今日は会社がある日なのに、わざわざ空港まで送ってくれると言ってくれた。
休みの日も渋滞なら、平日の通勤時間も渋滞だ。
通常なら空港まで三十分だけれども、一時間はかかるだろう。
振り返ってみると本当に楽しい旅行だった。今回は特に人の親切が身にしみた。あっという間の七日間だった。
礼さんとも今度いつ逢えるのかと思うと胸がいっぱいになる。
私は初めての海外旅行が中国だったせいか、中国に関心を持ち、中国語を学び始めて、
それがきっかけで今回旅行でお世話になった人達に知り合った。
人生の中で通り過ぎる人は沢山いるが、親しく付き合って行ける人は数少ない。
この人達とはこれからもずっと付き合って行きたいと思うが、隣国と言っても外国なのだから逢える機会も少ない。少ないどころではなく、もう逢えないかもしれない。
そう思うと目頭が熱くなっていく。だから今を楽しんで、また失礼のないようにしなければならない。
中国では相手にお世話になって本当の友達になると言う。今もそう思っているのだろうか?
刻々と空港に近づいて、礼さんとの別れの時間が迫って来る。
空港に着くと、搭乗手続きを終えるまでいてくれると礼さんが言うので、あまり時間を取らせてはいけないと空港使用券を購入し、礼さんと別れた。
母が
「本当にいい人で涙がでちゃうわ」
と言った。
私も一人だったらきっと泣いていただろう。目が潤んできた。
と、思っていたのもつかの間で、中に入ると最後の買い物が始まった。品揃えが出来ていて見やすい。しかし、値段も高い。
それなのに母はここでも色々と買いたいと言った。壁掛け二枚と小物入れ。喉の薬とお茶。
待ち合いゲートにはもう人がいなくなっていた。
飛行機までのリムジンバスに案内されて、いよいよ中国ともお別れだ。
飛行機に乗り込むとすでに駒先生は座席に着いていた。私達の席は一番後ろだったので食事が終わった時間にでも挨拶に来ますと言って、横を通り過ぎた。
食事が始まって少しすると映画が始まった。〇〇七だ。
私は海外旅行の時の機内の映画を楽しみにしている。日本ではまだロードショウされていない新しいものをやるからだ。
アメリカの飛行機に乗った方が良い映画が見れる。
食事が終わったので、先生の席に行くと熱心に画面を見つめていた。せっかく熱中して見ているのだからと声をかけずに、出直すことにした。
映画が終わったので再び先生の席に行ってみたが、今度は睡眠中。自分の席に戻って母と話していると向うから先生が来られた。
母が席を替わりますと言ったら、先生は
「jiaziちゃんとはいつでも話せるから」
と言うので、必然的に私が先生がいた席に移ることになった。
先生が座っていた席あたりに行くと二つ席が空いていた。
何番の座席だったか確認しようと戻りかけると、男の人が
「中国の先生の席ですよね、ここですよ」
と教えてくれた。
「隣の席は東芝の人よ」
と言われたことを思い出して、
「ありがとうございます。あ、T会社の方ですか?」
と聞いたら
「いえ、K会社です」
と言われた。
相手も
「◎◎会社の方ですよね?」
と言うので
「いえ、○○会社です。」
と答え、
「お互いさまですね。」
と笑った。
彼は一人らしいので聞いてみたら、お父さんが十年以上も北京に駐在しているらしい。どこの会社か聞こうかと思ったが、悪いと思ったのでやめた。お父さんは単身で北京にいるやしい。昔は中国に興味がなかったので、あまり北京に行かなかったが、ある時急に興味を持ちはじめて、それからは休みの度に北京に行っているとのこと。お父さんの住まいを拠点にして、色々と旅行をしているらしい。そんなことを話していたら、もうすぐ成田に着くとの放送が流れた。
成田に到着し、飛行機を降りると、行きに同じ飛行機だった静岡の人達と一緒になった。飛行機の中でしか一緒にならなかったが、せっかくだからと写真を撮った。この人達と出会った時は一緒に写真を撮るなんて思ってもみなかった。
縁はいなものだ。
写真を送ることになり、住所交換して別れた。
荷物を受け取り、税関も過ぎると先生ともお別れ。



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